この記事をご覧のあなたはシロアリはゴキブリの仲間だと知って「それならゴキブリ用の薬剤でシロアリの駆除ができるのでは?」とお考えかもしれません。
結論からいえば「ゴキブリ用の薬剤でシロアリの駆除は不可能」です。
この記事では、ゴキブリ用の薬剤でシロアリの駆除が不可能な理由を解説していきます。
シロアリとゴキブリの違い
まず、ゴキブリとシロアリは仲間であることは間違いありません。約3億年前に、ゴキブリの先祖から進化してシロアリが誕生しています。
では、具体的にゴキブリとシロアリは何が違うのでしょうか。
ゴキブリ用の薬剤でシロアリの駆除が不可能である理由にもつながってきますので、この項目では特に食性や生息場所などの生態に焦点を当てて違いについて解説していきます。
〇木材を食べるシロアリの方が直接的な被害がある
まずは大きな違いとして、食性の違いが挙げられます。
シロアリは木材を餌とするのに対し、ゴキブリは人間のふけや垢などの老廃物や、人間の食べ残しなども食べてしまいます。
一見するとゴキブリの方が見た目の不快感も相まって害のある存在のように感じられてしまうと思いますが、家の木材を餌とするシロアリの方が直接的な被害は大きいです。木材への被害があると駆除後に補修費用などもかかってきてしまうため、シロアリの方が質が悪いと言えるでしょう。
〇姿が見えない分シロアリの方が発見が遅れる
ゴキブリは家の中のキッチンなどに出現しますが、シロアリは床下を住処とし群れを発展させていきます。
ゴキブリを見かけた際には即座に対応できれば大きな問題は発生しませんが、シロアリはある程度被害が進行していないと発見することが非常に困難です。
シロアリ被害に気付くきっかけとして一番多いのが「羽アリを見かけた」というものが一番多いのですが、このシロアリの羽アリは、ある程度発展した群れの中から新たな群れの女王アリ、王アリ候補として群れから飛び立ったシロアリなのです。
新たな群れを形成するシロアリが育つほど群れが発展しているということは餌となる木材を多量に摂取している、つまりある程度被害が進行しているという状態であることになります。
「被害状況が進んでから発見して、補修費用がとんでもない額になってしまった」
ということになってしまう前に予防をすることは重要です。
〇シロアリの群れは人間顔負けの縦社会
シロアリもゴキブリも、群れを形成するという点は共通しているのですが、社会性の有無に違いがあります。
ゴキブリの群れには個体ごとの役割は存在せず、家族だけではなくフェロモンに引き寄せられてやってきた個体も群れに加わるなど比較的自由な群れです。
対してシロアリは明確にカーストが存在しており、各個体が役割に忠実に動きます。
簡単に役割を解説すると
【働きアリ】
群れ全体の90~95%を占める一番カーストが低いシロアリです。
卵や幼虫の世話、巣作りなどの雑務をこなす役割があります。
【兵アリ】
群れの中に3%ほど存在しています。
外部の調査や仲間を守ったりなど名前の通りに戦うことができるシロアリです。
【ニンフ】
名前からは想像ができないと思いますが、先ほど解説した新たな群れの女王アリ、王アリ候補として群れから飛び立つ羽アリのことです。
【副女王アリ、王アリ】
群れの中に数匹ずつ存在している、王アリ、女王アリが死んだときに代わりを勤めるシロアリです。
【女王アリ、王アリ】
群れに1匹ずつ存在している、生殖活動のみ行うシロアリです。
このように、シロアリは人間顔負けの社会性を持つ昆虫です。これがゴキブリ用の薬剤で駆除が不可能な理由のキモとなってきます。
ゴキブリ用の薬剤でシロアリの駆除が不可能な理由
ここまでゴキブリとシロアリの生態をご説明しました。この生態が深く関係してきます。
そもそも同じ仲間ではありますので
「同一の薬剤で今目の前にいるシロアリを駆除することができるか」
という点で見ればそれは可能です。ですが
「根本から駆除ができるのか」
という点から見ればそれは不可能なのです。この項目ではその理由をご説明いたします。
〇シロアリ用の薬剤は効果が出るのをあえて遅くしている
ゴキブリ用の殺虫剤をゴキブリに吹きかけたことがあると思います。
吹きかけたそばからゴキブリが弱っていきその隙に対処をしたのではないでしょうか。
シロアリに向けて同じく即効性のある薬剤を使用した場合、薬剤に触れたシロアリは殺すことができるかもしれませんが、群れ自体に影響はありません。
シロアリの群れはバランスの取れるように各役割のこなせる個体を産んでいるため、効果はほぼ無いと言っていいでしょう。
ではなぜ効果が出るのを遅くしているのかというと、働きアリが餌を持って帰ることと仲間同士でグルーミング(毛づくろいのようなもの)を行う習性を利用するためです。
餌となる木材に効果が出るのが遅い薬剤を注入することで、シロアリは薬剤がついていることに気づかずに群れの中へ餌を運び込むことになりますので、群れに直接薬剤を届けることが可能です。また、土壌に薬剤を撒いておくことで、シロアリが体に薬剤をつけて群れに帰ります。そのシロアリを他のシロアリがグルーミングすることで群れの中で薬剤が広がっていきます。このような点からシロアリ駆除に効果が出るのが遅い薬剤を使用することは重要です。
〇シロアリが嫌がらないような作りになっている
先ほどシロアリが薬剤を体に着けたり、餌として持って帰ることで根本からの駆除が可能だということを解説しました。
そもそもこれを成立させるためにはシロアリが薬剤を避けないことが前提です。これを「非忌避性(ひきひせい)」といいます。シロアリが嫌がらないようになっているという意味です。
対してゴキブリに使用する殺虫剤の特性に「忌避性(きひせい)」というものがあります。これは非忌避性とは逆で嫌がるような作りになっています。もしもゴキブリ用の殺虫剤を撒いたとしたら、シロアリはその殺虫剤がついた箇所を避けるようになり、拠点とする場所を変えてしまう可能性があります。そうなってしまうと被害箇所が複数に及んでしまううえ、殺虫剤の効果がなくなると元居た場所に帰ってきてしまうために、被害箇所が増えてしまったり、今シロアリの群れはどこにいるのかの特定が困難になってしまうことがあります。
〇コンクリートで薬剤が分解されてしまう可能性がある
近年では床下にコンクリートが使われている住宅が増えてきました。
コンクリートは「強アルカリ性」であるため、一般的なゴキブリ用の殺虫剤に使われている成分は分解されてしまう可能性があります。分解されてしまうとせっかく散布しても意味がなくなってしまいます。
シロアリ用の薬剤は「耐アルカリ性」であることが多いです。これはアルカリ性のものに分解されないような成分で作られているという意味です。分解されないので薬剤が効果を発揮し、シロアリにしっかりと作用します。こういったことにも配慮して薬剤を選定する必要があるため、シロアリ専用の薬剤を使うことは非常に重要です。
シロアリ用の薬剤を使えば自分自身で駆除をしても良いのか
ここまでゴキブリ用の殺虫剤でシロアリの駆除が不可能な理由を解説してきました。
では、シロアリ用の薬剤を使用すれば自分自身で駆除をしてもいいのかというと、それはおすすめすることができません。
この項目ではプロの駆除とDIYでの駆除の違いについて解説していきます。
〇プロ用の薬剤は木材部分用と土壌用で分かれている
市販のシロアリ駆除薬剤は一般的には木材部分用であることが多いです。
対してプロの使用する薬剤は土壌用、木材部分用で分けており、被害状況や家の状況に応じて柔軟に対応することが可能です。
木材部分用の薬剤もただ吹きかけるだけでは十分な効果は望めなく、特に被害箇所には専用の道具を使用し木材内部に注入する必要があります。もちろん全く効果がないわけではありませんが、プロ用の薬剤、注入方法にはどうしても劣ってしまいます。
〇プロは土壌に浸透しやすい薬剤を使っている
プロ仕様の薬剤は市販のものに比べて土壌に浸透しやすいという性質を持っています。
土壌に浸透しやすいと、当然強い効果を望むことができます。
また、プロは薬剤散布専用の機械を使用するため、満遍なく撒けるうえに浸透しやすい薬剤を使用しているということになります。当然市販の薬剤を使っているのとは効果に大きな差が生まれます。
〇散布すべき場所にしっかりと散布する必要がある。
先ほど解説したようにシロアリ用の薬剤は土壌に撒くのはもちろんのこと、木材にも吹きかけ、被害箇所には専用の道具で薬剤を注入する必要があります。
仮に専用の道具を持っていたとしても、自身での駆除は困難でしょう。
土壌には満遍なく撒けばよいかもしれませんが、木材部分の被害箇所の特定が非常に困難です。
「そんなの見ればわかるよ」と思うかもしれませんが、暗い床下でライトを頼りに確認していく中で本当にすべての被害箇所を特定することができるでしょうか?見落としてしまう可能性も考えられるため、確実に駆除したいという場合はプロに任せるのが最善でしょう。
〇工程をしっかりと理解している
シロアリ駆除の薬剤を撒くといっても、闇雲に撒いているわけではありません。
まずは土壌にしっかりと吸着させて、食害がされている箇所にはしっかりと薬剤を注入して・・・と、現場の状況次第でとるべき対処は違うので「これをすれば絶対に正解」というものはありません。プロであればこれまでの経験からしっかりと適切な対処を取ることができるますので安心して任せることができます。
まとめ
ゴキブリ用の殺虫剤でシロアリの駆除は可能なのかについて解説しました。
ここまでの内容をまとめると
〇シロアリとゴキブリが仲間であることは間違いない
〇ゴキブリ用の殺虫剤でシロアリの駆除が不可能な理由として
・効果が出るのが早いため根本からの駆除が難しい
・「忌避性(きひせい)」であるため、やはり根本からの駆除が難しい
・コンクリートによって分解されてしまう可能性がある。
〇シロアリ用の薬剤を使用したとしてもDIYでの駆除はおすすめできない
市販のシロアリ用の薬剤も全く効果がないわけではありませんが、やはり業者によるプロ仕様の薬剤を使った駆除には劣ってしまいますので、シロアリを見かけて駆除をしたいと考えている方は業者に依頼することをおすすめします。
住空間本舗はシロアリ駆除のプロフェッショナルであるしろあり防除施工士の資格保有者が在籍している会社です。シロアリ駆除後の被害箇所の補修も自社で行うため一社で完結し、ご安心いただけます。「確実にシロアリを駆除したい」という方だけではなく、「シロアリを見かけたわけではないけど不安」という方も、無料床下調査も実施しておりますので少しでも気になることがありましたらお気軽にご相談ください。